スウェーデンの教育
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平成20年5月、私はスウェーデンの学校を視察しました。視察したのは、レクサンド高校、カール・マルムステン工芸高校、ミョービリィ高校、そしてレクサンドの小中学校と成人学校です。以前、米国の高校を視察させていただいたこともありましたが、スウェーデンの高校は、日本や米国より体験学習を尊重し、職業と結びついていました。

日本の高等学校の主流は普通科ですが、スウェーデンでは、レストラン科、自動車科、クラフト科、自然環境科、医療科、保育科、動物科、などの多様な学科を設置し、職業人としての知識や技術を教えています。レストラン科であれば、校内の食堂を地域に開放し、実際に調理実習やウェーターをこなしながら就職していきます。そのため、高校のインターシップは5週間義務づけられ、企業と学校は密接な関係を保っています。再教育のシステムも確立していて、選んだ仕事が自分の適性に合っていなければ高校にもどって学び直すことができます。それが簡単にできるところが魅力でした。

スウェーデンの人口は、936万人です。そこに、エリクソン、サーブ、ボルボ、イケア、H&Mといった世界的な企業が多数存在しています。国の維持と産業の活性化を図るためには、教育こそが大切であると考えています。したがって、大学までの授業料は無償ですし、教育に関する施設・設備については最も充実した国の一つになっています。

だからといって、日本の教育が劣っているとは思いません。きめ細やかな指導内容や献身的な教員の姿勢は他国にはないものです。これは日本の良さであり、他国には真似のできないものだと思います。しかし、1人1人の個性を尊重し、体験活動や対話を通しながら子供たちを育てていこうとする姿勢には学ぶものがあります。フィンランドの教育もそうですが、問題解決能力や創造力を育成しながら学力を高めていこうとする姿勢こそが、今日の日本の教育に求められていることではないかと思います。北欧ではアウトドア教育にも重点が置かれ、自然と触れ合いながら心を豊かにしようとしています。特別支援の子供たちを特別扱いすることもありません。同じ学校の中で自分をみつめさせるのです。

個人的に考えさせられたのは、校舎内の空間処理の見事さです。空間に遊びがない日本の校舎と異なり、まるで校内に公園があるかのように教室や廊下が配置されています。トイレは全て個室で教室の近くに設置されていますし、机や椅子のデザインには心を癒す美しさがあります。パソコンはもちろん、理科や社会の教材も贅沢というほかありません。

スウェーデンでは、国が基本となる教育政策を示します。自治体はそれを自分の責任のもとに自主的に運営します。したがって教育長は各校を常にモニターしなければなりませんし、ヘッドマスター(校長)はその成果を出さなければならないのです。

人は生涯学習するものであり、教育はそのためにあります。成人学校には、何歳になっても入学することができますし、学びたいことを自由に学ぶことができます。教育は国民のためにあり、教育こそが人を豊かにするものであるという思想を感じました。
(写真はレクサンド高校)
by manabinomori | 2010-06-04 19:41 | スウェーデン
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