スティーブ・ジョブズと盛田昭夫
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米アップルのスティーブ・ジョブズ(CEO)が、社内の電子メールで病気療養のため休職すると表明しました。彼は私と同世代の経営者であり、現代における数少ない夢を創造するリーダーでした。それだけに残念です。ぜひ回復して、今後も魅力的な製品をつくり出して欲しいと願っています。その彼が尊敬していたのがソニーの盛田昭夫です。トランジスタラジオ、トリニトロン、ウォークマンなどの革新的な商品開発はアップルの手本であったとジョブズは語っています。マッキントッシュ・カラークラシックはアップルコンピュータの原点とも言えますが、そこにトリニトロン・ブラウン管を採用したのは彼らしいところでした。

実は私も盛田を尊敬していました。それはある出来事がきっかけになっています。もう25年も前の話になりますが、新しいもの好きの私が購入したVTRはベータマックスでした。しかしVHSが登場し主流になっていくにしたがい、ベターを2台も所有していた私は危機感を持ちます。このままではベータがなくなってしまうのではないかと思った私は、その思いと今後の方策について「ソニーへの提言」(けっこうな長文)としてまとめ、盛田会長に送りました。そしてある夜、教員住宅をノックする音がしました。なんと、ソニーの社員が「盛田に言われてやって来ました。ご意見を聞かせて下さい。」というのです。これには驚いてしまいました。そもそも私の手紙が会長室に届くとは思ってもいませんでしたし、例え届いたとしてもそれで終わりだと思っていたからです。ところが、盛田は「こいつに会ってこい」と指示を出したのです。

盛田が偉大だったのは、消費者の声を大切にしたということです。同時に、秋葉原に出かけ自ら製品をチェックしていました。このような姿勢こそが、トリニトロンやウォークマンを生み出す原動力となったのです。私がソニーを意識して買うようになったのはこうしたことがあったからです。ところが、盛田がいなくなってからのソニーはひたすら混乱します。繰り返される組織再編は社員の意識を低下させ、韓国サムスンへの技術供与(クロスライセンス)とパネル委託はライバルに追い抜かれる要因をつくり、ソニーブランドの象徴でもあったAIBOをトヨタに売却するという迷走を続けます。ソニー・スピリットを忘れたソニーなどに魅力を感じません。常に新しいものを創造しようとする姿勢、夢をつくりだす力こそがソニーらしさであったはずです。最悪のリーダーは、米国財界人との懇談を楽しみ、あげくの果てにそのポストを彼らに譲ってしまいました。『Japan as Number One』と言われた日本の象徴がソニーであったように、現在の混迷する日本の象徴もまたソニーに思えてなりません。

リーダーに求められる資質が何であるかを盛田は教えてくれます。そしてその盛田と同様かそれ以上に優れた才能を持っているのがジョブズだと思います。アップル製品には創造力があり、とても美しい。そしてそこには夢があるのです。時代をつくりだすリーダーとしての才能をジョブズには感じてなりません。アップル製品から見えるジョブズ像は、美を好み、頑固で、妥協を許さない。一方で、オリジナリティを大切にし、負けず嫌いで、時代の先頭を走ろうとします。そこに大きな魅力を感じます。私が彼を好むもう一つの理由は、私と同じようにジョン・レノン(ビートルズ)の大ファンだということです。そろそろMacにしようかなと考えるこの頃です。
(盛田は1992年に名誉大英帝国勲章を受勲しています)
by manabinomori | 2011-01-19 23:07 | Apple | Comments(0)
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