福岡県の中学校2年生の男子生徒が、いじめられたと遺書を残して自殺をし、こともあろうか担任までもがいじめをしていたことが発覚しました。これは教育現場では絶対あってはならないことです。 「からかいやすかった」と担任は述べていますが、教師の仕事は、からかわれやすい生徒の立場を理解し、そうならないように指導することのはずです。ところが教師自らやったというのであれば、それはいじめをなくすどころか、助長したことになります。これはある意味で犯罪に近い行為です。このような人間が教師をしていること自体間違っています。 今回の事件は、教師としての本質的な部分、つまり人間性そのものが問われるケースです。いくら教科指導力や部活動指導力があったとしても、いじめを発見し指導できない教師は不適格ということが証明されたわけです。子どもたちに心豊かな教育をするためには、私たち自身が心豊かな人間でなければならないということです。 私はこれまで様々ないじめを見てきました。その経験から、大小の差はあるにしても、いじめはどこの学校にも存在すると思っています。それは世界中から戦争がなくならないのと同じです。大人の世界でもいじめは存在します。もしかすると子どもたち以上に悪質かも知れません。極論を言わせていただけば、人間がいる限りいじめはなくならないのです。 だからこそ、私たちは子どもたちを注意深く見守って行く必要があるのです。ある研修会で「うちの学校にはいじめが全くありません」と豪語した教師がいましたが、それは本当でしょうか。もしかすると気がついていないだけかも知れません。なぜならいじめは、教師からもっとも遠いところで起きているからです。どこの学校にもいじめの要因は存在し、それが何らかのきっかけで発展したり、しなかったりするだけのことです。それを自覚できない教師もまた危険といわざるを得ません。 いじめは心に傷をつくります。その傷は表面からは見えません。そこがいじめをわかりづらくしているところです。しかもいじめほど一方的な行為はありません。そこには思いやりの心など全くなく、ゲーム感覚で執拗に傷つけ、それを見て楽しむのです。そしてその行き着く先が今回のようなケースです。そうなってしまったら、その子が生きてきた意味も、その子を育ててきた意味も、全て失われます。このように、いじめほど残酷なものはないのです。人としてもっとも許せない行為、それがいじめなのです。 では、いじめをなくすためにはどうすればいいのでしょうか。それは難しいことではありません。常に子どもたちと接し、その様子をこと細かく観察していればいいのです。必ずその兆候を発見することができます。そして、例え小さなことであったとしても、重大なこととして受け止め、すぐにケアすることです。これで大事には至らずに終わります。ただしここでは、弱者の視点でものを見られることが前提になります。いじめの加害者は「一緒に遊んでいただけです」「ふざけていただけです」と必ずいいます。それに惑わされてはなりません。真っ先に考えなければならないのが被害者の気持ちです。もし被害者が苦痛を感じていたのであれば、それは間違いなくいじめなのです。そのことがわからないと、今回のようなことに発展してしまいます。 特に気をつけたいのは、教師という仕事は忙しいため、いじめを発見しても後で対応しようとすることです。ところが、いじめは常に動いています。翌日になれば、予期せぬ事態に発展していることだってあるのです。いじめを発見したらすぐに対応する、これがいじめ解決の基本です。 最後に忘れてはならないのが、保護者との信頼関係を強化することです。子どもたちの情報を保護者から収集していれば、未然に防止できるケースがあります。日頃から家庭とのコミュニケーションを図ることは、学校や担任の教育方針を理解し協力してもらえることにもつながります。仮にいじめが発覚したとしても、協力してスムーズに解決できます。しかし信頼関係がなければ、学校と家庭の関係は泥沼の状態に陥ります。加害者と被害者の関係も同様です。 こうしてみるといじめの問題は、教師の意識の問題であるということがわかります。いじめはどこにでも存在します。そのことをいつも忘れず、一人ひとりの子どもたちに愛情と情熱を持って教育をすることが大切なのです。 <「学びの森」平成18年10月18日第11号より>
by manabinomori
| 2006-10-18 16:04
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