PEACE BED アメリカVSジョン・レノン
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★多大な才能、ユーモア、そして人間性を持った男を祝福する。/ニューヨーク・デイリー・ニュース紙
★ジョンの平和活動はアートだ。アートとは信じるものを守る闘いであり、勇気がいることだ。それがまさにジョン・レノンである。/横尾忠則
★この映画を見ろ!ジョンは世界中の人々の心の底で生きている。ジョンを殺すことは誰も出来ない。/篠山紀信

これは「PEACE BED アメリカVSジョン・レノン」のカタログに掲載されていたメッセージです。私はこの映画を期待しないで見ました。なぜなら、これまで見た映画やドキュメンタリーの多くは、彼の本質に迫ることができず落胆ばかりさせられていたからです。もし良質の映画を上げるとすれば、ジョンの友人スチュアートを描いた「バック・ビート」、ジョンとブライアン(ビートルズのマネージャー)との関係を描いた「僕たちの時間」、そしてジョンの生涯を描いた「イマジン」だけです。オノ・ヨーコが製作に関わると悲惨な結果になる傾向があります。「PEACE BED アメリカVSジョン・レノン」は、そのヨーコのインタビューが重要な要素になっているものの、客観的にジョン・レノンの姿を描き出すことに成功しています。

監督はデヴィッド・リーフとジョン・シェインフェルドです。彼らが訴えたかったのは、「なぜアメリカ政府はジョン・レノンを脅威だと思ったのか?」「ジョン・レノンの発言がなぜそんなに危険だったのか?」「ジョン・レノンに起きたことから僕らは何を学ぶべきか?」です。ジョンに関するFBIファイルの公開を求めて闘ったカリフォルニア大学のジョン・ウィナー教授のコメントまで収録されていたり、グリーンカードを勝ち得た時の映像まで見つけ出す執念には驚くばかりです。新しいことはさしてないのですが、ピーター・バラカンが雑誌『Cut』の中で述べているように、この映画によってジョン・レノンを立体的に把握することができたのは収穫です。ジョン・レノンの生きた時代を客観的に検証している力作です。

ジョンはポール・マッカートニーと『抱きしめたい』を歌って世界を魅了し、『In His Own Write』でベストセラー作家になり、『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』でロックを革新し、『愛こそがすべて』を世界初の衛星中継で歌い、『ジョンの魂』で全てをさらけ出し、オノ・ヨーコと『ラヴ&ピース』を訴え、引退して子育に専念し、復活したかと思うと凶弾に倒れました。1人の人生とは思えないほど波乱に満ちています。その後半部分を客観的に描き出したのがこの映画です。ジョン・レノンの勇気と雄弁さを知ることができるドキュメンタリーです。

この映画を見て思ったことは、彼は時代のリーダーであったということです。「フラワーパワーは失敗した。だからどうした。やり直せばいいだろ」という前向きな姿には感激します。何より一つ一つの楽曲の強さを改めて感じさせられます。『平和を我らに』を初めて聴いたとき、つまらない曲だと思った自分が恥ずかしくなります。彼は時代を超えて生き続けるメッセージがなんであるかを知っていたのです。『イマジン』がいまでも歌われているのはそのためです。

私は今でも、ジョンはFBIにマインドコントロールされたマーク・チャップマンに殺されたと思っています。でも一方では、ジョンの曲に刺激されたもう1人の自分(マーク・チャップマン)によって殺されたとも思っています。1980年12月8日、マーク・チャップマンはジョンにアルバム『ダブル・ファンタジー』を差し出し、ダコタ・アパートの前でサインしてもらっています。そのアルバムの5曲目に『アイム・ルージング・ユー』という曲があります。凄まじい曲です。そこにあるフレーズ、「Stop the bleeding now」がひっかかります。このフレーズが引き金になったのではないかと思うのです。なぜなら、音楽はその人の生き方まで変えてしまうほどの力があるからです。特にジョン・レノンの曲には。

(写真左は映画のパンフレット、右は映画を特集した「Cut」12月号)
by manabinomori | 2007-12-09 12:06 | ビートルズ研究
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