北の光をうたう 中野北溟の世界
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北海道立近代美術館で、「中野北溟の世界」が始まりました。道内の公立美術館では初めての本格的書道展です。主催者側のメッセージは次のとおりです。

中野北溟が重要なモティーフとして取り組んできたのは、日本近代の詩文です。たっぷり墨を含ませた筆でうるおいある墨痕をあらわしたり、余白を生かした空間にかすれた線で簡素なあじわいをみせたり、ことばの韻律や文字に触発されながら、北海道の澄明な光をおもわせる清新な表現がうみだされてきました。それは、北の風土に根ざした生活の中で、作者自身の身体にたくわえられてきた、みずみずしい生命のリズムともいえます。本展は、北海道の詩人・原子修の長編詩「原郷創造」による連作を中心に、「海」をテーマとする作品群、北欧の叙事詩「カレワラ」による連作、初期から最近までの代表作を加え、約80点により、中野北溟の世界を一堂にご覧いただきます。ことばの世界に深くねざした「読まれる」表現であり、同時に、紙にあらわされるイメージとして絵画のように「見られる」表現でもある、書という芸術。美術館という展示空間を得て、あらたな表情をみせる中野北溟の書の世界を、こころゆくまでご堪能ください。
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私は本当にラッキーな人間です。偶然会場で中野先生とお会いすることができました。北海道新聞の記事(中央)で顔を覚えていたことが幸いしました。本校がこれから推進する書道教育についてもお話させていただきました。「近代詩文書」という授業があることに興味を持たれたようです。終始笑顔で私の話を聞いて下さいました。「来年本校でご指導願いたいのです」と話かけたかったのですが、恐れ多くてそれは言えませんでした。86歳とは思えないほど生き生きされていました。「名刺をいただけますか」と求められましたが、私は持ち合わせていませんでした。大失敗です。
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『海』(原子修 詩)2005年です。「『海』は故郷を意識したものです」とおっしゃっているように、羽幌出身の中野先生には特別な思いがあるようです。
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これも2005年の作品で、『浪ばかり』(中原中也に依る)です。書が絵画と同じ芸術であることを実感させます。道新の記事の中で、「理想の書」について次のように語っています。「何か人にひしひしと迫ってくるような書。頭で考えることなしにできあがる書。まあ、無心だな。」
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『サンポ物語 不滅の賢者』(北欧叙事詩『カレワラ』より)1999年です。私がこれまで見た書の中で、中野先生の書は最も美しく感じます。そして心にスッと入ってきます。「言葉の意味、音、響き、運動感覚みたいなもの。発想を得るためのこの四つの要素にかかわる感動が自分の中に重なって、よし書こうとなる」(同上)とおっしゃっていますが、それは見る者にさらなる輝きを持って迫ってきます。私の感性が揺れるのです。それがどの作品からも感じられます。
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圧巻なのは、詩人原子修さんによる長編詩『現郷創造』です。滲みやかすれ、そして余白などを巧妙に使いながら、言葉を自由に操っています。北海道を愛し続ける中野先生の思いが伝わります。詩の一部を紹介します。

第一章 現郷創造(原子修 序の詩より)
~略~
海と森と野に生きる命ある
ものがそれぞれの使命を語り
最後に鮭が群なしてのぼる川の
ほとりで人が語った
北の郷の命あるすべてのものが
うちに霊魂をやどし
言霊のはたらきによってそれぞれの
言葉をもち
ともに語り合える命同士なのだ…と
~略~
by manabinomori | 2009-09-19 12:19 | 松前高 書道教育 | Comments(0)
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