松前城資料館には貴重な資料が展示されています。しかし鑑賞していて悲しくなるのは、写真上の『麦叢録』(模写)にしても『夷酋列像』にしてもレプリカが展示され、実物は函館にあるということです。先日訪れた函館市立中央図書館では『夷酋列像』を松前に返して欲しいと思ったぐらいです。下の蠣崎波響の『花鳥図屏風』は石狩市の田中実様から寄贈されたものですが、このように松前で生まれた文化は松前にあるといいですね。
波響の『花鳥図屏風』をよく見ると、右側の鳥が描きかけのように見えます。あるいは意図的にそうたのかも知れません。鳥のポーズや足は二羽とも同じように描かれています。もしかすると、右側に描いたものが最初のもので、構図に納得できず左下に描き直したともいえます。しかし、このように同じポーズの二羽を重ねることにより、時間的な変化を意図させ、強調化させることも可能です。波響が何をねらったのかとても気になります。この絵を見て感じることは、まるで漫画の主人公を描くかのように、波響は花鳥を自分のスタイルとして確立させていたということです。そこに風のような美しさを感じます。