アップル
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朝日・読売・毎日新聞のウエブサイトを開くと、「The Beatles.iTunesに新登場」という、これまでにない大きな広告を目にします。「毎日jp」にいたっては、フラッシュ映像まで使っています。ここまでの巨額を投じて、アップルがビートルズを宣伝するのはなぜなのでしようか。

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そもそもアップル(Apple Records)とは、ビートルズが1968年に、ビートルズ&カンパニーを発展させる形で設立したアップル・コアのレーベルです。これは世界初のアーティスト自身によるレコード会社として、林檎を使ったデザインの斬新さとともに大きな注目を集めました。最初のシングルは「ヘイ・ジュード」で、その効果もあり記録的なヒットになりました。その後ビートルズの解散などもありましたが、ソロ作品はアップルから発表され続けていましたし、94年にはビートルズの「LIVE AT THE BBC!」がアップルからリリースされ、それが「アンソロジー」にまでつながっていました。アップルの誕生は、アーティストが自分たちのレーベルを持つことができることを示し、音楽業界の在り方を根本から変えてしまう出来事でもあったのです。

スティーブ・ジョブズが命名したアップル・コンピュータ(Apple Computer)の誕生は、ビートルズを管理するアップル・コアから、商標権を侵害したとして訴えられます。ビートルズ・ファンの私にとっても「アップル」は特別な存在でしたから、ジョブスに対して不快感を持ちました。1978年に和解にいたりますが、そこには「アップル・コンピュータが音楽事業を扱わないこと」という条件がつけられました。したがって、アップル・コンピュータがパソコンにMIDIを搭載しただけでも法廷闘争になりました。音楽を扱う「iPod」や「iTunes Music Store」にいたっては、音楽事業そのものであり、大きな問題に発展します。

そして2007年2月、両社による最終的な和解が成立しました。それまでビートルズの商標であった「アップル」が、アップル・コンピュータの商標となったのです。スティーブ・ジョブズは、「私はビートルズを愛しており、彼らの商標に関して対立するのはいたたまれない。将来も問題が起きない解決ができてすばらしい。」とコメントしています。和解内容については知るところではありませんが、iTunesでのビートルズの配信にあたっては、「明日、いつもと同じ一日が、忘れられない一日になる」(Tomorrow is just another day)と予告しています。そして11月17日、ビートルズがiTunesにやってきました。

もし、ビートルが解散することなく存在していたなら、アップル・コンピュータという名称は存在していなかったことでしょう。そもそもアップル・コアは、エレクトロニクス、映画、出版、レコード、小売業でスタートしていたのです。また一方で、この和解によって、ビートルズは新たな「アップル」を獲得したことになり、その音楽を永遠に、そしてより広く伝えることができるようになったのです。今回のアップルの広告にはそのような思いが込められているのです。
by manabinomori | 2010-12-17 22:08 | ビートルズ研究
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