「教育振興」(第434号)に掲載された私の学校経営論をお届けして、この仕事の最後にさせていただきます。 「学校経営に求められる創造力と実践力」 北海道釧路明輝高等学校長 石塚耕一 一 はじめに 釧路明輝高校は、釧路北高校、釧路西高校、釧路星園高校の統廃合により、平成19年度に誕生しました。道東唯一の都市型総合学科として開校時は注目を集めていましたが、最近ではその魅力も薄れつつあります。設置した系列や教育課程についても課題が指摘されるようになり、これまでの成果を踏まえながら見直す時期に来ていました。 二 学校経営方針 本校のよさは、全国でも唯一の、アイヌに関する科目「アイヌ学」、地域を学ぶ「釧路学」、あるいは国際理解系列を持つ総合学科ならではの「ドイツ語と文化」や「フランス語と文化」など、多様な科目を学ぶことができることです。また、福祉・生活系列においては、地域の関係機関と連携しながら活動し、様々な成果を上げています。生徒は明るく素直で、生徒会活動や部活動は活気に満ちています。 このような状況の中で、私が示した学校経営方針は「新しい時代をつくる教育の創造~夢と感動が生まれる学校~」です。 この経営方針の実現のために、「釧路明輝高校が育てる5つの力」として、①創造力、②表現力、③読解力、④問題解決能力、⑤コミュニケーション能力の育成を掲げました。総合学科の教育システムの中でこれらの力を育成することにより、「学力の向上」「豊かな心の育成」「進路の実現」を図ろうと考えたのです。 三 教育の深化 私たち教育者は、どうしても「井の中の蛙」になってしまう傾向があり、学校という閉じた空間の中で物事を考えがちです。本校の教育を深化させるためには、意識改革とアイディアが必要でした。そこで、東京都内にある総合学科高校を視察するなど、本校が実施している教育内容の検証と、先進校の教育を学ぶ機会をつくりました。そして、その成果を校内研修会の中で明示しながら、課題解決の方策について教育課程委員会等で協議していきました。この作業に取り組むことによって、本校の未来像が見えてきたのです。 新教育課程を編成するにあたって、前提としたのが系列の見直しでした。これまでの系列のうち、「地域経済振興系列」を「グローバルビジネス系列」へ、「情報メディア系列」を「メディア・アート系列」へ、「健康・福祉系列」を「福祉・生活系列」へと進化させ、中学生や地域住民が理解しやすく、魅力を感じる内容に変更するとともに、学校設定科目も大幅に見直し、民間人講師から本校職員へというシフトも図りました。重要なことは、生徒が自由に選ぶ科目選択制を、系列を生かした系統的な学習へと転換を図ったことです。これは質の高い教育を実現するためであり、全国で問題になっている総合学科の曖昧さの反省でもありました。 四 ドイツへの生徒派遣 学校には「オンリーワン」としての魅力が必要です。生徒が自校に誇りを持てることは、自分自身への自信や学習意欲にもつながります。そのための方策として、ドイツへの生徒派遣を企画しました。本校では「ドイツ語と文化」を学習していますし、ライプツィヒには学術的に貴重なアイヌ民俗資料があることから、高校、大学、博物館を訪問することにしました。 帰国後は、現地で学んだことを全校生徒に報告させる機会を設けるとともに、地域での報告会も開催し、本校の取組が釧路地域の実践となるように心がけました。ドイツへの生徒派遣は、国際社会に貢献できる人材の育成という視点からも大きな意味があります。また、職員がドイツの教育から学んだことは本校の教育にも生かせるはずです。 五 地域の文化を創造する 「高校生が釧路を元気にする」というテーマで、釧路芸術館との共催によるイベント「Meiki Art Wave」を開催しました。これまでのような文化発表会ではなく、より今日的な視点から、映像、映画、演劇、ダンス、演奏、歌などの芸術性の高い発表を行い、釧路の文化を活性化させようとしたのです。 参加者は、生徒、職員、そして琴奏者である民間人講師、ジャズピアニストである卒業生にまで及び、アートホールは満席となり、生徒のもつ個性や才能が遺憾なく発揮されました。 高校が文化面で地域に貢献することは容易いことではありません。しかし、地域住民は高校生の活躍をとても喜んでくれました。新教育課程には「表現と創作」という科目を設置しました。数年後には、この科目が大きな役割を担っていくことでしょう。 六 おわりに 校長として7年目を終えようとしていますが、学校経営ほど難しいものはありません。学校というところは、新しいことについては極めて消極的なところです。だからこそ、学校には創造力と実践力が求められます。それこそが学校経営の根幹なのかも知れません。
by manabinomori
| 2013-03-30 19:50
| 明輝高 学校経営
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