ジョン・バーニコート著(羽生正気訳)の『ポスターの歴史』の1ページ目には、「ポスターは、その誕生後の100年間を通じて、絵画と特異な関係を保ち続けてきた。すなわち、一方で20世紀の視覚芸術の運動を消費者の媒体へと翻訳しながら、広告の本性と諸限定は、絵画の形式と方向に、何度も影響を与えてきた。」とあります。つまり、初期のポスターにおいては、それは絵画と共存していたということを意味します。ロートレックやミュシャのポスターはその代表でありそれはどちらとも区別できない要素を持っているのです。この本は、私が大学生だった時に、ポスターを研究しようと家庭教師をしながら貯めたお金で購入したものです。当時の3,900円という価格は、今なら1万円に相当するかも知れません。
おもしろいことに、この本の中では横尾忠則と三輪しげるという二人の日本人デザイナーが紹介されています。横尾忠則の『天井桟敷』はカラーページで紹介されていて外国からも注目されていたことが分かります。当時の彼はビートルズの日本版ポスターを制作したり、ジョン・レノンと交流があったり、あるいはサンタナなどのビッグバンドのレコードジャケットなどを制作していました。ポスターはその時代の象徴であることを考えると、横尾忠則はもっと評価されて良いデザイナーではないかと思います。また彼は、今日、画家として活躍していることを考えると、まさにポスターと絵画との関係を問いかけ続けてきた作家の一人であると思います。