トーマス・ルフ展 写真はアートにとっていまだに“新しい”メディア
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昨年観た写真展ではライアン・マッギンレー展が最も刺激的でしたが、次に興味深かったのが東京国立近代美術館で開催された「トーマス・ルフ展」でした。彼は1958年にドイツで生まれました。私と世代が近いこともあり、彼の作品の変遷は私自身の歴史とも重なります。日本では初めての回顧展になりますが、2012年の美術手帳「パラダイムシフトを遂げる写真環境」としてすでに取り上げられていました。
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彼が注目を集めることになったのがこの2メートルにも及ぶポートレイトです。「私が自分の作品を自伝的なものだと言う理由は、制作のきっかけを日常生活のなかにつかんでいるからです」(美術手帳2012年8月号)と言っているように、作品の素材は身の回りにあります。このポートレイトはその代表的なものでしょう。
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まるで抽象絵画を思わせるこれらの作品では、イメージが特定できないほどに拡大したりレタッチしたりしながら、新たな世界を創造している。メディアの進化やデジタル化の中で写真としての可能性を追い求めている。
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「私が作品を通してずっと試みてきたことは、人々の足を少し止めさせて、彼ら自身が何を、どのように見ているのかを考えるための、ひとつのイメージを差し出すことです」とのことです。ここではそれが具現化されています。
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日本の報道写真を使いながら作品にしています。
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「ヌード」シリーズです。インターネットの画像を臆することなく使ってしまうというあたりが面白いし、それが問題になることもない。このあたりの絶妙な感性がどの作品からも感じられます。「すべての人が、写真の影響から逃れることはできない」という彼の言葉は、時代と共に増しているように感じました。確かに「写真はアートにとっていまだに“新しい”メディア」なのです。
by manabinomori | 2017-01-02 19:47 | 展覧会レポート 東京
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